杜の舟型録帳/木工芸・童話・小説

紫陽花咲く
到底散水如きでは追いつかぬ風のガーデン
目をやるのも気の毒になるほど
シナシナに萎れ、色褪せていた
紫陽花が
昨日の雨で息を吹き返せば
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散策の歩も思わず軽くなる。
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頭上高く
不如帰が啼いて飛ぶ。
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~不如帰~
昔、日向の山奥に二人の兄弟が仲良く暮らしていた。
普段は山菜や川魚のエノハ獲りをして里へ売りに行くのだが
その日はどうしても大きなエノハが獲れないので
つい、普段は行かない深い渓谷まで踏み込んでしまい
その時、兄は滝の飛沫に濡れた苔に足を取られ
崖から落ちて動けなくなってしまった。
その日から弟は怪我をした兄の分まで稼ぐために
遅くまで働かなければならなくなった。
しかし、まだ幼い弟には商売になるようなエノハは
なかなか獲れず自分の食べる分は小さなものばかり。
それでも兄が早く元気になりさえすればと
毎日、一番大きなエノハと炊きたての飯を兄に食べさせて
あとはその残りと山菜の僅かの稼ぎで米や薬を買ってきた。
まだ寝たままの兄は、このところ弟が一緒に飯を
食べようとしないのが不審に思えて尋ねた。
「どうしておまえは一緒に飯を食わないんだ。」
「兄さん、心配には及びません。
私は明日の準備もありますから後で戴きます。」
兄は動けない自分の目を盗んで、もっと大きなエノハを
食っているに違いないと疑いはじめた。
いや待てよ、あんな大物が売れさえすればそれより
もっと旨い物を買って、道々食って帰るに違いない。
そう疑いはじめると、いつも優しく看病してくれる
弟の腹の底が見えてきて憎く恨めしく思えてくるのであった。
どうしても、どうしても我慢が出来なくなった兄は
看病と仕事で疲れてぐっすり眠り込んでいる
弟の腹を切り裂き中を覗き込むと、はっと息を呑んだ。
もう息をしなくなった弟の腹の中には
先程自分が食べ残したエノハの骨と
僅かの烏麦の穂があるばかり。
兄はこんな優しい弟を疑い
あやめてしまったことを悔いて一晩中泣きあかし
泣いて泣いて泣くうちに、今まで動けなかった身体は
ふうっと宙に羽ばたき、いつの間にか
一羽のホトトギスになっていた。
それからホトトギスは千八声啼き続け
口から血を吐くまで
食べ物にありつけないのだと云われている。
「不如帰」の名からも「帰ることのない」という意味あいが
読み取れて何とも哀しい話しである。
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