杜の舟型録帳/木工芸・童話・小説

南国奇譚2・バーテンダーの影
南国奇譚・2
バーテンダーの影
展示会初日、懇親会の飲みなおしだと眠れぬ夜のために
ビールを買いに出た序でに
古本屋に立ち寄る道すがら
最初の年に泊まった駅前ホテルを思い出し
その後どうなったろうと気になり始め
「よもや潰れてはいまいが。」
好奇心は時として人の不幸に向けられることもあり
ふらりふらりと幾つかの路地を抜ければ
玄関の階段や歩道の亀の甲羅のようなヒビ割れから
雑草が伸び茂って、建物全体の色艶も失われ
灰暮れ色に曇った空に、のおお~んと悲しげに突っ立っていた。
005_20170621234948902.jpg
「彼は何処へ行ったろう。」
残り少なくなった胡麻塩髪を櫛目綺麗に
オールバックに撫であげ、蝶ネクタイにチョッキ姿の
あの老齢のバーテンダーを思い出し
半上がりの二階にあるバーを見上げると
明りのない窓辺に架かるカーテンがチラと動いて
あのバーテンダーが人待ち顔で
こちらを覗き見たような気がした。
「ああ、今夜のビールはほろ苦い・・・」

♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨NANGOKUKITAN♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨
湯場童南国奇譚3・背後霊

にほんブログ村 ハンドメイドブログ 木工へにほんブログ村 写真ブログへにほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

プロフィール写真
0000morinof00000000000 福岡県筑豊の小高い丘の上に棲息工房「杜の舟」を生業としながら小説・児童文学などを執筆

カテゴリ
最新記事
リンク
来場者数