杜の舟型録帳/木工芸・童話・小説

出土研智物語5・ドリーネの正体
春一番の吹き荒れる朝であるが
陽気は至ってよろしく陽射しは心地よい。
月の広場を散策しながら蕗の薹の収穫をしているところに

『杜の舟子さん、助けていただけませんか。』と背後から
聞き覚えのある声がする。
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「何でそんなところから現れるのです。」
人がすっぽり収まるほどの穴の中から、かろうじ顔を出して
何時もの見知らぬ人が助けを乞うている。
『後ろから近寄ろうとしたら落っこちゃったんです。
しかし、良いですなあ、こんなところにドリーネが
形成されているなんて、すこぶる驚きですなあ。』
何時も唐突に現れては姿をくらます「見知らぬ人」も
こう何度も現れると「見知りの人」であるが
私のことを「杜の舟子」などと呼ばれては困る
正式には「モリノフ猫」であるから心するように。
そんなことを訂正させながら穴から引き揚げ
「だいいち、こんなところにドリーネはありません。
ドリーネは石灰岩層の改正された鍾乳洞が陥没して出来た
穴や窪みのことで、この筑豊炭田地帯に現れる穴は
大抵、旧炭洞などが陥没して出来るもので
多分、この穴は人力のみで掘られた
「狸掘り」と呼ばれる坑道跡の陥没穴でしょう。」
筑豊地帯では今でもよく起こる現象ではあるが
見知りの人は、そんな説明など聞くでもなく
『蕗の薹は実に春の香りがしていいですなあ。』と
取り落とした蕗の薹を拾い集めては黒いコートの
ポケットにねぢ込んでゆく。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆IDESUNAKENDIMONOGATARI☆☆☆☆☆☆☆☆☆
虎落笛出土研智物語6・カマイタチ

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石炭層の上には比較的新しい堆積層があり
脆くひび割れた砂岩層などが比較的浅い部分にあると
雨水などで風化流出し鍾乳洞まがいの洞を形成し
陥没穴が起こることも考えられる。
工房の裏山の一部に露呈する砂岩層にも
幾つもの間隙が見受けられるし、造成した時には
幾つかの古い狸掘り跡も見つかっていることから
「狸堀り」と「砂岩間隙」両説、譲り難いところであるが
この暗くて深~い陥没穴を覗く気にはなれないでいる。

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