杜の舟型録帳/木工芸・童話・小説

カレースプーン「椨」
神様の宿る木と云われる椨(たぶ)の木で
地味な色合いながらも魅力ある樹である。
宮崎県から、ほんの少しばかり入手したもので
数本作っていたが、もうこれが最後の1本になってしまった。
贈られる方が神事などにも興味を持たれている方らしく
数十種類ある中から、これを御紹介すると即決戴き
「椨」の由縁について書き留めておくことにした。
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「椨」は「木」偏に「府」で形成される
府は都や役所またその建物、蔵倉などを意味し
人や神々が、つどい集まるとも比喩して云う。
また諸説あろうが、常緑木の普遍性に対する
畏怖から「霊産」「霊住」などと崇められ
その語源が軟化したと考えるのも合点が行く。
この椨は常緑高木で15mから20mになり
直径も1mほどの大木になり
ご神木として神社などにも植えられている。
古くは日本書紀にも見受けられ
天磐櫲樟船(あめのいわくすぶね)または
鳥磐櫲樟船(とりのいわくすぶね)の
櫲樟は樟(くすのき)または椨(たぶ)の木を表し
磐は岩石を表すが、この場合常緑樹である櫲樟の
枯れることのない常盤木(ときわぎ)を表したものと
考えた方が古代のロマンを彷彿とさせはしないだろうか。
古来より常緑の樹々に再生と永遠の命
常世の夢を抱き、その変わらぬ緑の色を求めて
勾玉などにも神秘の緑色の翡翠石を
用いたのではないかと想像が広がる。
また「天」や「鳥」は、人知の及ばぬ移動力である船を
空飛ぶ鳥や水鳥に例えイメージを重ねたものであろう。
また、これに「舟」ではなく「船」が充てられることから
当時の大型外洋船を指していると想像させる。
余談であるが大国主の住む出雲の国美保崎に
天羅摩船(あめのかがみのふね)という羅摩(ががいも)の
鞘でできた船に乗って、蛾の皮の衣服を纏った小人
少彦名神(すくなびこのみこと)が現れたとあるが
これは大陸からの渡来人による、潮波に耐えるように
高い造船技術で気密性を持った大型外洋船のことで
遥か岸辺から見ると、乗組員が小人のように小さく
見えたのではないかとも思えるのである。
朝鮮半島でも丸木舟に椨を使い「tong bai」と呼び
このトンバイがタブになったとも云われるが
南洋でのカヌーの材もクスノキ科のウリンなどが
使われているから面白い。
櫲樟類は当時大木が手近に入り易かったのと
椨などは沿岸部にも多く自生し、移動も容易であり
硬材の割には生木での加工は、その時代の道具類でも
比較的容易に加工ができ、樟に比べて油脂分も多く
堅牢で耐水、不朽性にも優れている材木であった。
またこの椨の樹皮は染料や香木としても利用され
葉や樹皮を粉末にして線香の基材にも使われ
ている。
樟(くす)楠(くす)の「樟」は樟脳の原料にもなるクスの木で
「楠」は古くはタブの木に充てられた文字だそうである。

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