杜の舟型録帳/木工芸・童話・小説

やまぼうしの夢
藍甕の底を覗いたような
深いふかい藍の空に
二十三夜の月が掛かり
その光は淡い粒子になって
静かに地上に降り注ぎ
やまぼうしは月を見上げ
蒼い燐光を焚くように
ほうほうと燃えながら

ずっと古い昔の夢を見ていた

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それは夜をまたぐ銀河の
小さな雫の
ひと群れだったころの夢
北斗の星に巻かれながら
東の空に昇り西に駆けるのを
繰り返すうちに
地上の小さな水面に映る
夜毎の自分の姿に憧れ
戻ることのない約束で
月の光に紛れて降りてきた
こうして今は地上の星となって
風の丘に立っているけれど
生まれた夜空の恋しさに
空を見上げて咲いている
未だ明け遣らぬ空に啼く
不如帰には
やまぼうしの十字の花は
地上に昴る星の群れに見えて
銀河の雫のひと群れだった頃を
てっぺん駆けたかと問う
遠い夢だと応えずにいれば
不如帰は喉を妬き
寝ても覚めても
てっぺん駆けたか
てっぺん駆けたかと
啼き続けている。

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出土研智物語14・カンパネルラ
出土研智物語・14
カンパネルラ

タイトルのカンパネルラには何の意味もなく
己の願望として、こんな寒い日にはシゴトなんぞ
放っておいて、一日惰眠を貪っていたいとの
心の警鐘だとでも受け取っていただきたい。
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『寒波が居座って降り続きますなあ。こんな日には
温かい布団に包まって寝るのが一番でしょうが
時折りの風に、梢からどおっと吹き落ちる雪も
また見事なもので心が躍ります。』
確かに
「寒波寝るら」が、体力は消耗しないし
暖房もいらぬから経済には一番だろうことは
分かっているけれど、仕事を放るのは心に良くない。
だからやっぱり、ひとしきり雪の中を散策して
工房に籠る杜の舟であった・・・

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器が小さい
「器は作りません。」
随分以前には器も作ってはいたのだけれど
そのころ、某器作家氏から冗談交じりに
『人の領域まで手を出されると死活問題になります。』と
言われたことがある。なに
、杜の舟の仕事なんて
不可侵条約を結ぶほど大した量も技量もないのだから
その冗談を真に受けて手を止める程のこともなかったのだけれど
まだ青かったのもありポイと器の製作を投げてしまっていた。
この数年、器のご依頼が続き「器は作りません。」と
断り続けてはいたけれど、
他にやらなければならない事や
やってみたいことも沢山あり、それ以上手を広げていたら
どれもこれも中途半端になってしまう。
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器の小さい杜の舟は、ふらりと誘惑に負けて
小さな器を削ってみた。
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やっぱり我慢するのもストレスである。
木の塊が次第に形を成して見え始めると
ふふふふ~ん。と心が笑い、モヤモヤが
霧のように消えるのが解るのである。

すっかり鈍っている腕を鍛えて積年のご注文
「ヤーンボウル」や「コロン盃」「パンザラ」など
作る時間が出来ると良いのだけれど・・・
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どうせ、きょう一日は雪の中
「少し木材や工具など買い足して
器製作の準備でもしてみようか。」と
20年余りの呪縛の紐が解け始めている。

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出土研智物語12・てんぷら野郎
そうです誤解なきよう、杜の舟は見かけばかりの
鍍金仕立てでペラペラの似非物工芸家で

陰でも日向ででも「てんぷら野郎」と呼ばれているのです。
何故なら天麩羅、蒲鉾の外に、ハムやソウセイジを含む
練り物が総じて大の好物なのでありますから。
だから展示会などで海浜地方に出かけた時には
必ず蒲鉾屋などに立ち寄り、天麩羅や蒲鉾を買い求め
山間部や酪農地などでは出張展示会などは二の次で
ソウセイジやチーズを探し歩くのであります。
鹿児島に行けば、まるでオヤツ感覚に甘~い「薩摩揚げ」
筑後川を下り、家具の産地大川市では「志岐蒲鉾」
地元筑豊は内陸部なれど活況の魚市場あり「平長の
細工蒲鉾」
島根に行った折には「トビウオの野焼き」の極太焼き抜き。
その悪癖を察して秋田のHさんから嬉しいメール。
『土日、仙台にいる子供達の所に行って来ました。
お土産に笹かまぼこでも買って帰ろう・・・
と蒲鉾屋さんに行ってふっと杜の舟さんが
てんぷら?蒲鉾?いずれ練り物が好物だとブログで
見た事を思い出しホンの少しですがお送りしました。』

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「笹かま」の名を冠した蒲鉾は、どの地にでもあるが
やっぱり本場物を食ってみたい、憧れの蒲鉾なのである。
宮城
の「笹かま」は伊達政宗の「笹に雀」の家紋から名を拝借した
本場物で、噂には聞いていながら
食べるのは初めてである。
「おお、これが本物の笹蒲かああ~。」
その瓜をすするような声だか、蒲鉾の匂いに惹かれてか
また例の出土研智氏が、どこからともなく現れ
『地場で生まれた笹蒲なんて実に良いですなあ
借り名や通り名だけの笹蒲からすると、こいつは正真正銘
真の名を持つ笹蒲鉾ですから私くしめも
謹んでご相伴に与かりましょう。』と手を出した。
「なるほど、真の名は良いですねえ。その風土の中で生まれ
活き続けて来たものだから、そりゃあ美味いに決まっていますね。」
噛み締めればぷっくり押し返す弾力があり
磯香漂う潮味は
、満ち潮のようにひたひたと味蕾を刺激し
食欲をそそり
、ちょいと夢が叶った気分に盃も進む。
本日の肴の友は鹿児島の芋焼酎「晴天桜島」で
完熟バナナのようなフルーティーな香りが食をそそる。
自分の知る限りで食べてみたい蒲鉾はもう一つ
神戸の「焼き通し」杉板に練り付けた板蒲なのに蒸さずに
いちから焼き通しだけでの製法には興をそそられる。
Hさんに御礼を言わなきゃあならないのだが
食ってみないことには美礼の言葉も出てこない
まあ何事にも、こんな風に蘊蓄を衣して中身の無い
「てんぷら野郎」な杜の舟であるが
秋田のHさんには足が向けられなくなったぞ。

ご馳走様。

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虎落笛出土研智物語13・記憶の束

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出土研智物語10・鍍金のドングリ
ドングリという部類からすると少しばかり成りは違うけれど
同じ堅果類であるから樫の実だってドングリの仲間である。
落ちるおちる、ほんのソヨとした吐息のような風にさえ
樫の実はバラバラツ降り落ちる。
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落ちたばかりの樫の実は、まるで鍍金したように
ピカピカ光り輝くので草っ原の中からでも見つけやすいけれど
暫く曝されているうちに光を失って同化してしまうのである。
今夜はこいつらを焙ってビールのつまみにしてやろう
遥か古には甘樫丘に居を構えた蘇我入鹿なんぞも
これを濁酒のあてにして夢を語っていたのであろうと
思いをはせているところに貴奴の気配・・・
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『いやあ、良いですなあ。賢治さんもこの様を見て
どんぐりと山猫なんて書きたくなったのでしょう。』
突然現れた見知った人と『静まれ、しずまれ~。』などと
ついつい盛り上がってピカピカの鍍金仕立ての樫も
そうでない樫の実もポケット一杯に捩じ込むのであった。

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