杜の舟型録帳/木工芸・童話・小説

南酷の雨宿・不覚にも
南酷の雨宿
第四章・不覚にも

最終日は土砂降りの雨で流石に客足も伸び悩むが
その分作家諸氏との新朴もはかれて有難たい。
初日の懇親会の折り同席した長崎三川内焼の浅井氏夫妻と
亀岡氏とで作家談義に花が咲き、最終日の今日
打ち上げがてら夕食を共にすることになった。
二方とも本場で揉まれているだけにレベルが高いから
くすぐる話しが面白く、つい時間の経つのも忘れてしまう。
しかし困ったことに話しに夢中になっていたから
何を食べたか忘れてしまった。
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まだ少し小腹がすいていたので宿への帰りしなに
普段は行くことのないマクドナルドへ寄って裏メニューとやらの
ハンバーガーを一つ買い込んでビールのつまみにする。
明日は帰るだけだから気分が楽でいい。
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ちびりちびりとビールを飲みながら昨日の本の続きに目をやったが
不覚にも3ページも読まない間に眠りこけてしまった。

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第一章・夢十夜南酷の雨宿ただいま~。
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南酷の雨宿・帯に魅かれて
南酷の雨宿
第三章・帯に魅かれて

展示会二日目、この会場は普段は武道館として使われていて
エアコンなどの設備があるわけではないから
臨時で冷風扇などが数機設置されているのだけれど
出入口も開け放されていて外気温が上がり始めると
人と外気の熱気で蒸し風呂のようになる。
無論それを承知で参加しているのだから自前で扇風機を
持ち込んで、客には当てずに自分ばかりが涼んでいるのだが
流石にピークになると、こいつも温風機と化してしまう。
「こんな日は美味い物を喰って生ビールだ。」と
頭の中ではこの言葉ばかりが呪文のように繰り返されて
花こみち女史の反論を押し切り、またもや宿の隣の焼き肉店へ
いやいや、然程の肉食系ではないのだが生ビールを飲んで
ふらふら歩いて帰れるところが他にないからここにする。

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手持無沙汰の長い夜は、なかなか読み進まずにいた
友人の祖父である「安高団兵衛の記録簿」を読む。
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まだ多くは読み進んでいないのだが、実はこの本の
帯に魅かれて、もう大方読んでしまった気分になっていて
時化た作家に「自分に与えられた時間だけが自分の命だ、
ごちゃごちゃ迷って悩んでいたり、人に振り回されていないで
一歩踏み出してみろ。」などと偉そうに語っている。
:::
そうそう、こんな下らぬことなど書いてないで
少しでもこの本を読み進まなければ・・・


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第一章・夢十夜南酷の雨宿第四章・ただいま~。
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イライシャーは海のように・・・
風の丘は小高い丘の上にあり
山の端が藍を濃くする頃には
時折、鉄橋を軋ませる列車の
細く哀しげな汽笛の音が
杜を渡る風に千切れながら
遠く聞こえてくるばかり。

資料や雑多な収集物に押されて
窮屈な書斎に籠り依頼された書類の編集をする。
もう遠い列車の汽笛も風の音も止んで
夜通し啼き交わす梟の声を聴くばかり。
私は一体こんな夜更けに何をしているのだと
ふっと思うことがある。
今頃イライシャーは海のように
深い眠りについているに違いない

イライシャーの安眠のために
睡魔と闘いながら我が身と時間を削る
ばかばかしさを笑いながら
夜更けに井戸水で顔を洗い
ぢりぢりと小さく唸る電燈の音を
気にしながら最終工程に入る。
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・・・ああ、もう白みかけてきたらしい。

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花こみち工楽風展4th4・校正中
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夢病譚4・臨界点
夢病譚・四
臨界点

徹夜の作業が続くと「エネルギーの補給だ。」と
自分に言い訳をして駄菓子やチョコレートを喰う。
出来ればカリントウやオコシ、煎餅、ビスケットなど
歯ごたえのある素材の方が脳に刺激が起こって
眠気覚ましやストレス解消になると信じてやまない。
眠気覚ましならチュウインガムでも良かろうと思うだろうが
あいつばかりは、その時だけで栄養補給にもならぬし
段々口の中で弱腰になるからいけない。
喰うと言ったが、確かにこの時ばかりは食べることを
楽しむ感など毛頭なく、エネルギー供給よろしく
ぽいぽいバリバリと味も形も構わず放り込んでは
噛み砕く作業に専念しているのである。
その日の塗装の作業も延々と時間を食い潰しながら
既に夜中の十二時を回っていて、まだ先が見えないから
小休止の手で安物のチョコレートを口に放り込んだ。
どれでも選んで三袋で二千円に乗せられて購入した
ノーブランドの生チョコ紛いの輸入物である。
また作業を再開して暫くすると少し息苦しさを感じ
このところの寒さで風邪でも引いたのかと恨まれた。
よもや喘息でも有るまいが、この息苦しさは尋常でなく
肩で息をすれども、苦しさは次第に募ってゆく。
風邪熱でも出たのか、妙な浮遊感に身体の均衡が崩れ
塗装室の景色がぐらりと揺れ
彩度と明度を失い
顔面が腫れぼったくなり視野が狭ま
る。
「ああ、これは・・・」ふと思い出した、この症状は
以前に入院した時の造影剤点滴中に起こった
アナフィラキシーショックに似ている。
もし、そうであれば生死にかかわる重篤な状態なのに
血圧の急激な低下は判断能力をタールのように鈍らせて
危機を他人事のようにしか感じなくなっていている。
しかし思考がぼんやり鈍っているというよりむしろ
あたたかい何ものかに包まれ幸福感さえ感じているのは
ドーパミンが大量に放出されているからであろう。
ところが仕事人の悲しい嵯峨で、こんな「至福の時」にも
目の前の仕事が気になって仕方がないのである。
「困ったな、塗装の途中だから今、手を止められないし
ここで死にでもしたら納期の約束が・・・」一週間余りかけて
やっと仕上げ塗装作業に掛かったところであるが
途中でやめてしまえば、その一週間がフイになるだけでなく
塗装不良になったのを
最初っから磨き直してやるのも
心身が萎えて、精神衛生上はなはだ毒である。
この仕事をやり終えた時の達成感も、同じく至福のもので
脳内麻薬のドーパミンによるところが多いに違いない。
だからこの両方の至福を手に入れられるならば
この重たい図体でさえ、軽やかな天使にでもなれよう。
ただでさえ回らない頭に連動したように身体の動きも鈍って
訳もなく時計を目の前に貌と針の刻むのを見ているうちに
息はさらに苦しく、喉に湿った綿でも詰まったようで
深刻な状態が続いていて「病院に行かねば。」と
青い顔になって、壁を伝いながら電話の子機まで辿り着くが
今度はまた、そのキーボタンをぼんやり見つめて動かない。
固まって動けないのではなく、思考が動こうと勤めないのである。
「厄介だな、運転していて病院まで持たなかったらどうなる。」
救急車を呼べば周りに迷惑を掛けそうで大仰だし
命と比較するには余りにも些細なことばかりであるが
今は原子の一個も人の命も重く軽く同列に在る。
「アレルギーなら・・・。」苦し紛れに、手元にあった喉スプレーを
五、六回口内に吹きかけ、点鼻薬が喉から流れ出るほどに
鼻腔に噴射して天命を待つこと暫し。
「ああ、酸素が・・・」深く呼吸を整えながら
一命をとりとめたことだけを確認できると、やり掛けた
塗装作業をこなして、事務所の仮眠室に重い身体を預ける
仮眠室と言っても長ベンチに毛布を敷いただけの物で
安息の場ではないのだが、自宅に戻る気力も失せていた。
何時しか深い眠りに。と言うより、あの世にでも「気」を
持って逝かれたかのように身体は泥になって眠りこけた。
天球が巡り、夜明けに「気」が泥に戻ってこなければ
そのまま朽ちていたかもしれないが、閉ざしていた瞼が
最初に光を感じ、肌が夜明けの寒さを感じ、むくりと身体が
動いて起きあがり、ふうう。と息をついた時はじめて
「生きていたのか。」と実感したのである。
人間の心なんて単純ながらも不可解なもので
命さえ戻してもらえればチョコレートに何の恨みもなく
今後の付き合い方を考えさえすれば良いと思うようになる。
それから随分経ってからのことだが、何時ものE医者に
アドレナリン自己注射薬のことを尋ねてみた。
その時の経緯を聞かれたので、アナフィラキシーショックで
死にかけたことを話したら『馬鹿もん。』と叱られてしまった。
その時の処置で運よく症状が緩和したとはいえ、その後の処置を
適宜にやっておかないと命取りになるのだと言うのである。
夢病譚jpg (3)
代表的なアドレナリン注射薬にEPIPEN(エピペン)があるが
薬物や食物などによるアレルギー反応で
アナフィラキシーショックの初期症状が現れたときに
気管支を広げ心臓の機能を増強し血圧を上昇させ
ショック症状を改善する作用がある、携帯用のものであるが
あくまでも医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の
進行を一時的に緩和しショックを防ぐための補助治療剤で
効果は10分から15分くらいしか続かないので
速やかに最寄りの病院へ行くことが賢明であろう。
『話しには聞いているが、この薬を処方するのは
今回が初めてになるし申請して資格を取らなければ
処方できないので、しばらく時間がかかる。』
そうしてこの件はいつの間にか年越してしまい
年が明けて、ようやく手元に入った。
『これは1本15000円と高価な薬だが本当に買うのか。』
と問われたが、命の値段と思うなら、安いものである。
EPIPENは認可制だそうで、E医師はこの薬を手に入れるために
相当時間を費やし手古摺ったらしく『お陰で良い勉強になったよ。』
と嬉しそうにぼやくのであった。
しかし、これで不幸が収まらないから困ったもので、数日たって
何もアレルギーに該当する物質を口にしていないのに
似たような症状の軽度なものに、度々見舞われるようになり
「濡れたマスクをしているかのように息苦しさが続く。」と訴えたら
今度は検査の結果、アナフィラキシーで浮腫を起こしていた
心臓に疾患が出てきているらしいと言うのである。
夢病譚jpg (1)
『とりあえずニトロだな。』と言いながら紹介状を書き始めた。
E医師によれば病気の中で三大激痛というのがあり
『その痛さは口では表せないほど痛いのだ。』と脅しながら
『胆嚢炎、痛風、心筋梗塞。』と指折りしながら並べ立てた。
胆嚢炎。これは過去に既に経験して、今はちょん切って
しまったから記憶から葬り去っても良い痛さである。
痛風の中でも超厄介な偽痛風も一度患ったことがあり
その尋常でない痛さは経験しているが、痛風と違って
偽痛風には対処法だけで、これといった治療方法が無くて
食生活の改善なども大きな期待は持てないらしいから
いつまた、痛い目に合うか解らない恐怖は拭えない。
『だから、ある意味では痛風の方が楽なんだ。』などと
他人事のように言い下すE医師が憎たらしく思える。
だらだらとミミズの這ったような心電図を見ながら
『症状からして
狭心症の疑いが濃いが、放っておくと
心筋梗塞で死に至ることもあるんだぞ。』こいつには参った。
「この際、三大激痛とやらを経験するのも悪くないな。」などと
冗談交じりに想像してしまうのだが、このような狂気的な
考えを持つこと自体、脳に血液が巡っていない証拠で
『死ぬぞ。』の脅しにはさすがに、心が
ポキンと折れた。
受診前は、すぱすぱと歩いて病院に入って来たが
帰りには誰かに支えて貰わなければならないほど
身も心もヨレヨレの病人になってしまった。


元来人間付合いが上手くない方だから
人との係わりや創作に疲れると
こんな心痛い白昼夢を見るのである。
夢の続き、お楽しみに・・・

☽☽☽☽☽☽☽☽☽☽☽☽YUMEBYOUTAN☽☽☽☽☽☽☽☽☽☽☽☽
肋骨夢病譚界境線
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京子は・二章
閑悩私小説
京子は

二章  お見限りやわあ

以前に言われてはいたけれど深い話しになりそうで
やんわり回避していた件である。
『亡くならはった、お父はんの育ててきやした
北山杉で針山の台を拵えて貰えまへんやろか。』
杉は木目が粗いうえに柔らか過ぎて
轆轤加工には向かないし、思い入れのある材で
みすみす失敗はしたくない。
それにたった一個や二個のために材を
送ったり返したりも面倒で、経費も掛かり過ぎるから

「思いはわかりますが、なかなか難しいもので・・・。」
と、婉曲に断りを入れたつもりが、数日後には
杉材の切れ端が送り届けられたのである。
曖昧に濁した返事も悪いが、どうしても京子の中で
北山杉はしっかり根付いて動かないものらしい。

だから『杜の舟の旦はん、わてのことお見限りやわあ。』
などと、涙声にすねて電話などをよこすのである。
お見限り。などと勝手に決め付けられても困ったものだが
京言葉でやんわり言われると腹が立つより心地がいい。
このやんわり婉曲の京子と、私の優柔不断からくる
婉曲さが絡んで、曖昧極まりないやり取りになっているが
ちょっと、こちらの方が根負けしたところもあって
「ええ、ええ。きっとやります、きっと。」と、なだめながら
電話を切ってすぐさま「失敗しても知らないぞ。」という
身勝手な了見で削ってやるかという気になった。

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削り始めると工房中が甘やかな杉の香りに包まれ
作り手の哀れであろうか
、気分が高揚してくるのである。
「ああ、案ずることもなく上手く削れるものだ。」
やりもしないで、ぐだぐだと杉を悪くいったようで
杉にも京子にも、ちょっと申し訳ない気持ちになる。
興が乗って
、材料があるだけ削って仕上げたが
如何んせん、節くれの杉の端材であるから
節のあたりには、ひび割れが入っている。
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補修をする手もあるが杉材は収縮が大きいから
下手にひび穴の補修をすると後の狂いが
返って見かけを悪くしてしまう。
京子には「良い風合いが出ています。」とでも言って
このまま、送ろうかとまた、ずるいことを考えている。
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京子は・プロローグ閑悩私小説京子は・三章

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0000morinof00000000000 福岡県筑豊の小高い丘の上に棲息工房「杜の舟」を生業としながら小説・児童文学などを執筆

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